2010年10月19日火曜日

BBC WORLD SERVICE 聶偉亮さんインタビュー

伊藤梨紗

「日本はとても綺麗な国ですね」 聶さんから見る日本

今月5日、BBC WORLD SERVICE 聶偉亮さんを招いて取材をする機会に恵まれた。聶さんはイギリス国籍であり、来日するのは初めてだという。日本に来てからの日本の印象について「きちんとしています。他国、特にイギリスと比べると、とても綺麗です。」と話してくれた。

BBC WORLD SERVICEで記者として日々活躍している聶さんは、英語・中国語の二ヶ国語を話すことができ、仕事でも活用している。話せる言語が多い程有利であると話す聶さんは、現在、特に日本語を習得したいという。

「今は特に日本語が話せるようになりたいです。それで日本のニュースを日本語で読みたいですね。」
日中間のニュースは特に気になるのだそうだ。

カメラやマイクを常備している聶さん

聶さんの記者としての仕事

BBC WORLD SERVICEは世界のあらゆるニュースを扱っている。内容も政治・ビジネス・スポーツ・エンターテイメント・音楽など様々な分野を網羅しており、多言語で報道している。ラジオを中心に、インターネットのホームページやテレビジョンのメディアも活用し、多くのリスナーや読者・視聴者から信頼を得ている。そんなBBC WORLD SERVICEの記者である聶さんの仕事はどんなものなのか。

「ニュースというのは突発的なものなので、事前に準備ができません。なので、毎日緊張状態で過ごしています。」と話す聶さん。いつ起こるか分からない出来事に対して、常にアンテナを張っているとのこと。また、実際に事件が起こった際にも、様々な問題があるということを話してくれた。ある時は、事件が起きても、国が情報を規制し報道しなかった為に、全く情報を手に入れることが出来なくて記事にするのに困ったそうだ。

また、記事にする際は、事実を正確に述べ、公平に、正しい情報をリスナーに届けること、リスナーの信頼を失わないようにすることを念頭において執筆をしているそうだ。責任はあるが、事件が起こった際、リアルタイムに歴史が動く瞬間をみることが出来る、という。聶さんは、記者という仕事に誇りを持って毎日を過ごしているのだ。夢は、有名な記者になること、そして、時期をみて記者人生をまとめた本を書くことだそうだ。

聶さんがみる、これからの“日中間の関係”

最近は尖閣諸島等の問題で日中間のニュースが日本の話題に挙がっている。これからの日中間の関係について、聶さんに聞いた。

「日本・中国の政府間の関係については悲観的です。両政府が更なる勇気とテクニックを持って接しなければいけないでしょう。」両国の政府について厳しい指摘をみせた聶さん。しかし、国民間の関係はそうではないらしい。「しかし、国民間の関係については楽観的です。善良な人は両国にいます。今回実際に日本人の若者に会って、更に確信を持ちました。」聶さんは、両国が友好な関係を持つ可能性を見出していた。

これまでの経験を踏まえて、熱く語ってくれた

聶さんは、現在もその身ひとつで世界各地のニュースを追っている。様々な国を訪れ、国や人が世界を見る目はそれぞれ違うということに気付いたそうだ。そして、自分と違う世界観があることを知るべきであること、自分と違う考え方を尊重しなければならないということを学んだという。現在、グローバルな社会であるからこそ、その視点はすべての人に重要であろう。

(取材:伊藤梨紗・越田香苗・高梨杏奈・渡辺芙美)

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【記事を執筆した際での補足】

・一枚目の写真…聶さんのアップの写真が欲しいと思ったので、この写真にしました。カメラとまた、一緒に写っていて、記者らしく見えるのではないかと思いました。

・二枚目の写真…熱心に身ぶりも使って話してくれる聶さんの写真が良いと思ったのでこれにしました。記者が写っているとインタビューらしくなって良いと思いました。全体を写すよりもこの角度の方が臨場感が出ると思います。

・記事の最後の「現在、グローバルな社会であるからこそ、その視点はすべての人に重要であろう。」だけは私の個人的な意見をいれました。

記事なのでなるべく事実に忠実にして、個人的な感想は入れられませんでしたが、もっと入れれば良かったかなと思っています。

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【BBCインタビュー感想】

・取材自体は、以前の講談社の方に続いて二回目だったので、四人がよく動いて役割分担できていたと思う。私は大体カメラで写真を撮っていたが、どの角度が良いのか、この場の空気が伝わるようにするにはどうしたら良いがということを、以前よりも考えるようになった。

・聶さんがとても話しやすく、私たちの回答を誘導してくれるような流れを作ってくださったので、予想していたよりも緊張せずに出来た。相手が話しやすい場を作るというのはとても勉強になった。そして、言葉のキャッチボールとしての質問をこれから自然に出来るようにしたいと思う。

・取材される方について。今回これは初めての体験であったので、話すのに夢中で全然言いたいことが簡潔にまとまっていなかった。落ち着いて言葉を選ぶようにしたいと反省している。
そして、日ごろの癖か、結論はまず先に言わないといけないということを深く学んだ(私は余計なことを話しすぎる)。

・カメラの前では緊張するなあと単純に思った。話すという簡単な行為でも、人前ということを意識すると上がってしまうので、練習が必要であると感じた。

・英語と中国語がこれほど話したいと思ったのはこれが初めてかもしれない。
話せないもどかしさがあった。ここまで必然性を感じたのはあまりない。

・分かりあえる感動があった。相手の意見をしっかりと受け止め、核にせまる質問をする。
普段でも出来ることであるのに、今回は顕著にそれを感じた。

・聶さんが広い心を持っていたこと、これは自分にとても励みになった。
中国人だから怖いのではないか?という勝手な偏見はすぐに消え去ったし、もっと分かりあえるのではないかということを感じた。討論や議論は、外国の人とした方が面白い。

・自国日本について改めて考えた。日本独自のものは沢山あり(靖国、原爆、綺麗…)、これから社会に、国外に出ていくのに自国のことを発信できないと駄目だろうと思った。

靖国・原爆についてだが、国の責任として戦争の悲惨さ、他国にしてきたことの責任は国民として負うべきであると思う。しかし、私たちは同時に、それを新しく、違う未来へ変えていける、あるいは変えていく使命があると思うので、それに縛られているだけではよくないのではないかと考える。

・実際に記事が掲載されて、少し責任を感じたが、マスコミのように情報を操作したくはないので、そのまま書いてもらえて良かったと思う。

発信していう者の責任、読んでくれる人の信頼によって成り立っていること、これは聶さんが何度も繰り返していた。自分たちもその責任を担っているんだと思った。

BBC記者にインタビュー!

越田香苗

~BBC記者としての誇り~

BBCとはどのようなところなのだろうか。イギリスに本拠地を置き、国境を跨いでニュースを配信している。例え自国にとって不利な情報であろうとも、事実を尊重する。BBCに入社した者は、報道を実際に行う前に物事を公正で偏りなく見られるようにトレーニングを積むのだ。例として、時は世界第二次大戦。イギリスの敗北も偽りなく報道した。当然国民から反感を買う結果となったが、BBCの記者は皆、誇りを持って報道している。

~世界の中の日本~

「日本に来てみての印象はいかがですか?」私たちはニェさんに尋ねる。単純な質問に思えたが、実は一番意外な答えが返ってきた。――日本は綺麗です。日本国内しか知らない私にとって、東京はとても汚い。平気でゴミがポイ捨てされており、川の水は濁っている。しかし、ニェさん曰く“世界の国々と比べると日本は綺麗”らしい。素直に嬉しいような気もするが、世界はそんなに汚染されているのかと悲しさも混ざり、とても複雑な気持ちになった。
  
また取材で何カ国も旅しているニェさんは、自国と他国を比較して、自分と違う世界観があることを知るべきだ。そして、自分と違う考え方を尊重しなければならないと語ってくれた。

日本の印象について語るニェさん

~日本国民と中国国民のこれから~

私はニュースで見る限り、政府間同様、国民間も悲観的だと考えていた。しかし、国民間は楽観的だというニェさんの意見を聞き、ほっとした。日本の国民的スターであSMAPを知らないという返答には少し動揺したが、私は彼らのような人々が日中間の架け橋になるのではないかと考える。両国民が興味を持つ文化面を始めとして、日中関係は友好的になれるのではないか。

教科書問題について質問を受ける

私はニェさんから、教科書問題についてどう思うかなどの質問を受けた。教科書問題などで見るような、過去を隠したがっているのは、ほんの一部である。その一部が国のトップであることも問題なのだが、多くの日本国民は、戦争で自国が犯した罪と向き合っているということを、中国国民に伝えたい。現段階では、お互いの国のメディアが、相手の悪い面ばかり報道しているように思う。本当に私たち国民が感じていることが、相手国に伝わっていない。せっかく世界同時に情報を得ることが出来るところまでメディアは進化したのだ。もっとメディアを有効活用すれば、日中関係は良くなっていくことだろう。

インタビューの様子はtwitter中継された

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BBCインタビューメモ

*母国ではない国で働くことによって世界観は変わった?
絶対に変わる!
(例)世界地図の違い。つくった国が中心にくる。イギリスで中国が真ん中でないことに衝撃を受けた
それによって気がついたことは、それぞれの国や人が世界を見る目は違う!
それによって学んだこと①自分と違う世界観があることを知るべき②自分と違う考え方を尊重しなければならない!

*2カ国語話せるこのは有利?
有利。話せる言語が多ければ多いほど良い。
今は特に日本語を話せるようになりたい。なぜなら、日中間のニュースを日本語で読みたいから。

*日本に来てからの日本の印象は?
綺麗。きちんとしている。他国、特にロンドンと比べると凄く綺麗。

*日本の芸能人で有名なのは?
個人的に高倉健が好き。

*BBCのニュースはどういう視点から配信しているのか?
事実を尊重。BBCでは報道を実際に行う前に、物事を公正で偏りなく見られるようにトレーニングがある。
(例)第2次世界大戦において、イギリスが負けたときも事実に基づいて報道。反感は買ったが、誇りをもって報道。

*困ったことは?
中国は社会主義であり、民主主義の国との感覚の違い。
中国では国家主席は国民に選ばれた人ではないので、国民意見を代表できない。

*大変だったことは?
①2008年北京オリンピック前に起こったチベット暴動。なぜなら、中国メディアはこのニュースを一切報道しなかったので、リアルタイムで情報が入ってこなかった。
②写真説明のミス。主観的ミスではなかったが、リスナーの信頼度がさがった。大変なことは多多あるが、事件が起こったら、リアルタイムで歴史が動く瞬間を見ることができる!

*リスナーの反応は?
けなされたり、反対されたり、さまざま。リスナーの反応に出来るだけ応えることが仕事であり、リスナーとのコミュニケーションが大切。リスナーは神様。

*日中間はどうなると思うか?
①政府間=悲観的
両政府のリーダーが勇気とテクニック不足
②国民間=楽観的
善良な人は多くいる
「今日日本の若者に会って、更にそう思った」

*BBCのリスナーはどんな人?
世界各国の知識人、教育レベルが高い人。

*これからどんな記者に?
もちろん有名な記者になりたい。記者の仕事を全うしたい。そのうち落ち着いたら、記者人生をまとめた本を書きたい。

私の考えが変わった日~インタビューを受けて~

渡辺芙美

10月5日に、私たちは授業内でイギリスから来日したBBCの記者Nieさんと対談することができた。記者の方にこんなに多くのことをインタビューされることは初めてだったし、中国の方のこんなにも日中のことについて対談することができて、本当にいい経験になった。形式としては、授業をとっている私たち4人の生徒がそれぞれ感じている「中国に対するイメージ」を関係する「モノ」を持ってきてカメラの前で発表し、その後それぞれNieさんにインタビューを受けたあと、今度は私たちが事前に用意してあった質問をNieさんにインタビューするような形であった。授業と同時進行でTwitterで同時進行もした。

私にとって中国とは「一番行ってみたい国」

Nieさんから「中国はどんな国だと思いますか?」と言われたとき、私は「今一番行きたい国です」と即答した。インタビューを受ける前から、初めての海外旅行は中国がいいなぁと感じていたからである。周りは、中国に対して少し危険を感じている、ということも正直に伝えた。しかし、私は何度も中国に行ったことのある兄の影響で、とても中国に興味を持っていた。だから大学の第二言語選択では迷わず中国語を選択した。今回のインタビューでその勉強した力は全く発揮できなかったが。反日デモなどで、今日本との関係が悪化している中国。やはり私の周りや世間では中国を毛嫌いにする人も少なくない。今回のインタビューで、改めてなぜ自分が中国に興味があるのだろうと考えた。私は、中国のことについて全く知らないからである。ただテストのための勉強で歴史を学んだだけで、中国と日本の歴史も、中国の文化も、全く知らないからだ、と気づいた。文化や歴史に触れないのに「日中の関係を回復させるにはどうしたらいいのか」「なぜお互いの国はぶつかるのか」と考えるのはおかしい、とほかの人のインタビューを見ながらそう感じた。Nieさんにインタビューされて、言葉に詰まることもあった。経済や歴史について、もっと勉強しないといけないと感じた。自分の言葉で、母国以外の国について違う国籍の人に話すことは、なんて難しいのだと感じた。しかし、とてもいい経験になった。

家から持ってきた中国製のトランプを持って説明

「他国で地図を見て驚いた」

インタビューが終わったあと、次に私からNieさんに質問する時間になった。私は「海外に行ったらやはり価値観とか、考え方は変わりますか?」と聞いた。私は生きてきてまだ一度も海外に行ったことがなかった。だから、絶対にこの質問をしたかったのだ。Nieさんは「必ず海外に行った方がいい。価値観も変わる。いろんな人がいて、その人たちの存在を認めたり意見を聞いたりすることが大切だ」とおっしゃっていた。Nieさんは例として、地図の話をしてくれた。Nieさんは海外に行く前、自分の住んでる中国が真ん中に大きく写っている地図しか知らなった。それが当たり前だと感じていた。しかし、ロンドンに行ったときに見た地図は中国はとても小さく、更に隅に描かれていて、それを見てとても驚いたと言っていた。私はその話を聞きながら、今までにない衝撃を覚えた。Nieさんの話を聞いている途中でなぜか涙が出そうなくらい、感動してしまった。なんて私はちっぽけな存在なのだろうと感じた。世界にはいろんな国があって、文化があって、たくさんの人がいる。多くの国を見てきたNieさんがいう言葉は一つ一つとても重みがあって、とても説得力があるものであった。Nieさんとお話しさせていただいて、もっと私は日本以外の国を見なくてはいけない、と感じた。

私たちの質問に丁寧に答えてくれた

~対談を終えて~  

Nieさんとの対談は、私の大学生活の中でとても大きなものとなった。BBCの記者の方と話すことなんて簡単にできることではないし、海外の方と意見を交わすことは貴重な体験となった。中国のことについて意見を述べながら「私って実は中国について何も知らないんだ」と気づかされたり、マスメディアからの情報に影響されてしまっている部分もあるんだと感じた。ただ「日中関係を回復させよう」と唱えるだけでなく、きちんと歴史や今起こっている問題をしっかり学ぶべきだと感じた。そして、やはり海外に行っていろいろな世界を覗いて多くのことを感じてみたいと強く思った。世界を飛び回って、感じたことを自分の言葉で世界中に発信するNieさんはとてもかっこよく見えた。本当にいい体験ができたと思う。

する目線・される目線

高梨杏奈

私が今回のBBC記者との取材において何よりも感じたことが、「する目線」と「される目線」だ。

夏休みにある新聞社にインターンシップに行ったり、取材をする仕事をしている人に話を伺う機会があった私は、口々にいっていたことを思い出した。

「インタビューをするということはとても難しい。なぜなら自分の求めた答えを質問の中から引き出すことが簡単ではないから」

この話を聞いていたからこそ、今回の取材は、普段に比べ客観的に見ていた。また、私はずっとtwitterを打ち続けていたため、他の3人よりもインタビューが少なかったため、3人の質問・答えをしっかりと観察することができた。する側である記者がどのように話を振っていくのか、それをどのように受け答えていくのか・・・やり取りを見ていくうちに、やはり記者の力というものの凄さを感じた。


その中で一番印象に残ったのは、『「軸にある答えがほしい」だからこういった質問をしているんだなぁ』ということである。

私が感じたのは、一番最初の質問にはあまり表れないが、された側の答えから、次の答えにつなぐ質問に明確に表れているなと感じた。答えを頭で整理して、どうすればほしい答えに結びつくのかを瞬時に考え、質問しているように見られた。そして、気になることはどんどん深く質問をしていた。

かくいう私たちの質問は、1度質問して、答えた内容からまた質問をするということはほとんど見られなかった。自分が質問をしたときも、「なるほど」と納得して、次の質問へ行ってしまった。しかし、もしここでもう一歩深く質問をしていたら、また違う答えが返ってきて、内容も深まったのだろうなと、後々になって気付いた。ここが、記者の力というものなのかなと感じた。


なかなかない機会に恵まれ、プロの記者の方と交流できたことは、とても幸せに思う。私は、このような仕事に興味を持っていたので、なおさら勉強になった。しかし、やはり取材というものはとても難しいものなのだなと感じた。きっと私たちから出てくる答えは、予想と反したものばかりであったと思う。そのいろんな考えを一つのニュースとしてまとめ、発信するということは、容易なことではないであろう。だが、やりがいはあるだろうなと感じた。プロの記者の仕事を少しでも触れることができてよかった。

写真は、する側の視点・される側の視点を意識した写真を選びました。